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宮本充のきまぐれ週報2

舞台は続く

は小さい頃から、ひとところに長く住んだことがありません。
だから故郷と言えるところがありません。
敢えて言えば、一番長く住んだ大阪が故郷と言えるでしょうか。
そして、学生時代を過ごした北海道が「第2の故郷」と言えるでしょう。

役者になり、舞台で全国を巡るようになりました。
単なる観光とは違い、各地で舞台に立ち、多くの皆さんと触れ合うようになりました。
自宅でテレビを見ていて、その土地が映ると、懐かしく見入るようになりました。
この歳になって、自分の故郷がどんどん増えていっているような気がします。

その代わり、その土地の自然災害のニュースには本当に辛い気持ちになります。
2014年の広島の安佐南の土砂災害は、「親の顔が見たい」の舞台でお世話になった翌年のことでした。

そして、今度の熊本の地震。
2年前の「親の顔が見たい」の九州巡演の旅で行きました。
お世話になった皆さんのことが思い出されます。
「熊本は阿蘇からの地下水が豊富にあるから水道料金はタダなのよ」と仰っていたのに、今は深刻な水不足と聞きます。
多くの方々が辛い生活を送っているのに、遠く離れた東京の、地下の小さな劇場で、虚構の世界に浸っている自分は一体…という思いがします。

でも舞台は続く。

結局、僕には何も出来ないのだから、この虚構の世界で、何かを生み出して、見に来てくれた人達の心に何かを残すことしかないのだと思います。

長崎県から、姉妹のお二人が、「ヴェニスの商人」を見に来て下さいました。
飛行機でいらして、舞台を2日間ご覧になり、すぐにまた長崎にお帰りになりました。
長崎もかなり揺れたでしょうに。
本当に有難いことです。

小学生の3年生から5年生まで、京都に住んでいました。
その時の同級生と数年前に東京で再会しました。
それ以来、僕を舞台をほとんど見に来てくれています。
そう、京都も故郷でした。
僕は故郷がたくさん!

彼女がメールをくれました。

「自然災害の暗いニュースばかりの数日、しばし劇の世界にひたらせて頂きます。楽しみにしています」

それが自分の仕事なのだろうと思います。
そう思って頑張ります。
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  1. 2016/04/21(木) 15:24:58|
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いよいよ初日

こは大山商店街。
池袋から東武東上線の各駅停車で三つ目の大山駅の改札口を出ると、アーケードの商店街が広がります。
頭上には大きな鯉のぼり。
この道を右へ行くと、商店街は枝分かれし、更にその先は川越街道まで続きます。
都内有数の巨大商店街。
何でも安い、飲み屋もたくさん。

これは写真に添える文章の筈でした。
昨日、稽古の始まる前に、血界カメラで商店街の写真を撮って来ました。
そして、今、カメラのフタを開けたら…メモリーカードが入ってませんでした!

今日は写真なしのブログです。
文章で何となく想像して下さい。

ここは、下町の風情たっぷりの街。
若い頃に住んでいた、巣鴨の地蔵通りに似た雰囲気があります。

「ヴェニスの商人」を上演するPit昴は、この街にあります。
「ベニス」でありません。「ヴェニス」です。
この間まで、ずっと「ベニス」と書いていたら、劇団のマネジメント部の「サカヨリン」から電話があり、「宮本さん、老婆心ながら…」と教えてくれました。
チラシを見て、間違いに気付いた次第です。
慌てて、前のブログを全部直しました。
恥ずかしい…!

Pit昴。
念願の新拠点です!
大山駅下車・徒歩30秒。
この階段を降りると(この写真も撮ったのに)我々の根城。
ここで稽古をし、ここで芝居を打つのです。
贅沢なことです。

いよいよ明日は初日。
そして、4月28までの長丁場。
頑張ります!

【お願い】
いつも皆さまには、ロビーに飾る素敵なお花を、どうもありがとうございます。
申し訳ありません…Pit昴は大変小さなスペースで、大きなスタンド花を飾る場所がございません。
誠に勝手ながら、今回はお気持ちだけ頂戴いたします。
私にとっては、舞台をご覧いただくことが何よりの喜びです。
ご来場を心より、お待ち申し上げております。
  1. 2016/04/08(金) 13:24:27|
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一本の指

っと暖かくなってきました~!
気温の上昇につれて体調もかなり良くなりました。
ほぼ完治!
抗生剤で胃腸がすっかり荒れてしまい、腹痛とひどい下痢に苦しみましたが、それもほぼ完治。
今は毎日「L」とか「P」とかいうヨーグルトを飲んでます。

指2


て、ようやく一本指の話です。
長々と引き伸ばしてご免なさい。

「十二人の怒れる男」の稽古中のことでした。
僕の役は11号。
台本には「11号はドイツ訛りで話す」とありました。
演出家と相談し、単なる訛りではなく、カタコトで喋ることにしました。
そして、「11号は東欧の母国の圧政から逃れて、アメリカへ逃れて来た移民」という設定にしました。
自分なりに、役の肉付けをしました。
家族構成、母国での生活、アメリカでのマイノリティーの苦悩などを色々と想像しました。
そういうものを背負って、陪審員室にいようと思いました。
しかし、それはなかなか難しいもの。
そういった苦悩を表現しようとしても、結局、それはただの説明で終わってしまうことになりがちです。
自分の過去を背負って、その場所に自然に存在する。
簡単には出来ないことなのです。

そんな稽古中のある日のこと。
稽古の始まる前に、8号役の、テアトル・エコーの後藤敦さんが僕のところに来て、こう言いました。
「以前、テレビで見たんだけどさ、ドイツの人は、『はい』と手を上げる時、指を一本だけ出すんだって。全部の指を揃えて手を上げるのは、『ハイルヒットラー』を連想させるからなんだって。11号も一度、そうやってみたらどうかな」

ナチスの台頭によって引き起こされた悲惨な戦争の記憶。
その辛い過去を乗り越えるために、自分たちで決めた意思表示の仕草。
僕は、その日の稽古で早速やってみることにしました。

被告の少年を有罪と思うか、無罪と思うか、12人の陪審員が手を上げる場面。
他の陪審員たちが指を揃えて手を上げる中、僕だけが一本の指を頭の上に掲げました。
すると、その瞬間に、11号の何かを理解できた気がしたのです。
彼の過去の一部を背負えた気がしたのです。
指を一本、頭上に掲げただけで。

昔、「怒りの葡萄」という作品に出た時のこと。
アメリカ人の演出家のジョン・ディロンさんが、稽古の時、アメリカの農夫達の写真を持ってきて、その立ち姿を真似るように言いました。
ジョンさんが合図をすると、役者達がゆっくりと稽古場の中央に集まり、写真の農夫達の恰好を真似て立ち、そのまま静止します。
そして、次の合図で、またゆっくりと歩いて、元の場所へ戻って行くのです。
その動きを繰り返す内に、自分の中に、農夫達の何かが芽生えたような心持になったのです。

農夫達の握手の仕方も、何度もやりました。
よく映画で見るような、「ハロー!」という感じで親しくする都会人の握手とは違い、内陸部の貧しい農夫達は、お互いに攻撃できない距離をとり、片手だけを前に出して、上目遣いで相手を見ながら、そっと握手をするのです。
「私はあなたに危害を加えません よ」という意味もあるのだそうです。
その握手を繰り返す内に、自分の中に、アメリカの貧しい小作農夫が生まれてきたのです。
人物の履歴や生活を色々と考え、それを自分の中に取り込もうとするより、ある一つの動作が、グッと自分をその役に近づけてくれることがあるのです。

行動が心理を引き出す。

演じる、というのは本当に不思議なものです。

て、「ヴェニスの商人」、気が付くと、何と今日が稽古の最終日!
明日は仕込み。
週末には、いよいよ初日の幕が開きます。
役者の息遣いも聞こえる空間で繰り広げられる、シェイクスピアの世界。
皆さま、是非、是非、お越し下さい!
詳しくは、劇団昴ホームページをご覧ください。

申し訳ありません、以下の日が売り切れとなりました。
4月 9日(土)、10日(日)、12日(火)、13日(水)、15日(金)、16日(土)、17日(日)、23日(土)、24日(日)。

11日(月)が残席わずかとなり、「こりっち」での予約受付は終了しました。(お申し込みは昴チケットコールのみとなります)
  1. 2016/04/05(火) 02:24:48|
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